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AI/技術

AIエージェントはSaaSを殺すのか?マッキンゼー調査「32%が自社開発へ移行」の裏側と隠れたコスト

2026/09/13 21:31 · 0 閲覧数

最近、B2B向けのSaaS営業担当者の間で「以前よりも営業メールが早く無視されるようになった」という声が増えているのをご存知ですか?

実はその背景には、ソフトウェア開発の常識を根本から覆すような巨大なトレンドが隠れています。2026年8月25日に発表された『マッキンゼー AI調査 2026(The State of AI: 2026 Global Survey)』において、非常に衝撃的なデータが明らかになりました。

なんと、回答企業の**32%が「AIコーディングエージェントを使用して社内で機能を構築できるため、少なくとも1つのソフトウェア製品または機能の購入を見送った」**と回答したのです。

「SaaS 代替 AI」というキーワードが現実味を帯びてきた今、これはSaaSビジネスの終焉を意味するのでしょうか?それとも、新たなIT戦略の幕開けなのでしょうか。本記事では、このセンセーショナルな数字の裏にある「企業規模による格差」や「隠れたコスト」を冷静に分析し、今後のソフトウェア調達のあり方について深掘りしていきます。

32%が「買わずに作る」を選択。業界を牽引するのはどこか?

マッキンゼーが97カ国、1,719人を対象に行ったこの調査は、AIエージェント ソフトウェア開発の現在地を如実に示しています。

ソフトウェア購入を見送り、AIによる内製化へ移行している割合を業界別に見ると、以下のようになっています。

  • テクノロジー業界:41%
  • ヘルスケア業界:39%
  • 専門サービス・エネルギー業界:38%
  • 金融業界:36%

さらに驚くべきは、AIによってEBIT(利払前・税引前利益)の5%以上を創出しているトップ層の「ハイパフォーマー企業(全体のわずか6%)」においては、**ソフトウェア購入を見送った割合が約50%**に達しているという事実です。

これまでIT業界における永遠のテーマだった『Build vs Buy AI(自作か購入か、それにAIがどう関わるか)』の天秤が、明確に「Build(自作)」へと傾き始めているシグナルと言えるでしょう。

大企業と中小企業で広がる「AI導入の格差」

「32%」という数字だけを見ると、あらゆる企業がSaaSを解約して自社開発に乗り出しているように錯覚してしまいますが、実態は少し異なります。

調査データを深掘りすると、年間収益10億ドル以上の大企業では、AIエージェントを本格導入している割合が前年の27%から40%へと急増しています。一方で、中小企業では22%のままで横ばい状態が続いているのです。

この点について、業界の専門家であるctrl + alt + orion氏は次のような分析を提示しています。

『このトレンドは専任のエンジニアリングチームを持つ大企業が牽引しています。中小企業は社内開発を管理するリソースが不足しているため、安易にSaaSのサブスクリプションを解約してすべてを自作すべきではありません』

つまり、現時点での社内ツール 内製化ブームは、豊富なエンジニアリングリソースを持つ大企業だからこそ実現できている戦略であり、リソースの乏しい中小企業が表面的なSaaS 予算削減を狙って飛びつくのは危険だということです。

B2B SaaSは終わるのか?専門家とコミュニティのリアルな反応

このマッキンゼーの発表を受け、ネット上のコミュニティや専門家の間でも激しい議論が交わされています。

RedditのB2B SaaSコミュニティ(r/microsaasなど)では、「エンジニアが『AIを使えば数日で社内ツールを作れる』と自信を持っているため、ワークフロー自動化ツールなどを売り込む営業メールが以前より早く無視されるようになった」という生々しい実体験が語られています。

しかし、これが完全に市販のSaaSを駆逐するかというと、そうではないようです。Substackで活動するあるAIアナリストは次のような見解を示しています。

『AIエージェントによって自作か購入かの前提は変わりますが、Salesforceのような複雑で高い信頼性やセキュリティが求められるシステムを、AIで完全に再構築することはないでしょう。主に代替されるのは、シンプルな社内ツールや小規模な新機能です』

SaaS企業にとっては、「誰でも簡単に作れるような機能」だけを提供し続けることは致命傷になり得ますが、強固なインフラと専門性を持つプラットフォームの価値は依然として揺るがないと言えます。

表面的なコスト削減に潜む「罠」と隠れたコスト

もう一つ見逃してはならないのが、AIコーディングツール導入に伴う「隠れたコスト」です。

回答企業の約20%が、「トークンコストを含むAI関連の運用コストがAI利用の制約になっている」と回答しています。これに関連して、専門家のArtur Markus氏は非常に鋭い指摘をしています。

『32%という数字は、必ずしもコスト削減を意味しません。企業は財務部門が追跡しやすいベンダーへの支払い(SaaS費用)から、アプリ単位での追跡が困難なエンジニアリングリソースやトークン消費へと予算を付け替えているだけである可能性があります』

また、RedditのAIコミュニティ(r/artificial)でも、「実際にAIエージェントのおかげでソフトウェア購入を中止したのか、それとも単にアンケート上で楽観的に答えただけなのか」と、数字の実態を疑う声も上がっています。

シャドーIT化や、後述する保守運用の手間を考慮すると、目先のサブスクリプション費用が浮いたとしても、長期的にはAIのインフラ費用やエンジニアの人件費がそれを上回るリスクも十分に考えられます。

よくある質問(FAQ)

今回のトレンドについて、まだ明確な答えが出ていないものの、多くの人が疑問に思うポイントを整理しました。

Q. AIエージェントで作成したソフトウェアの長期的な保守管理や技術的負債には、どう対処すべきですか?

現時点では、AIが生成したコードのメンテナンスは各企業のエンジニアリングチームに委ねられています。簡単に作れる反面、ドキュメント化されていないブラックボックスなコードが量産される「AI時代の技術的負債」が新たな課題になりつつあり、コードの品質管理プロセスの再構築が急務となっています。

Q. 購入が見送られたソフトウェアは、具体的にどのようなカテゴリに集中していますか?

専門家の分析にもある通り、高度なセキュリティや複雑なデータベース連携が必要な基幹システム(CRMやERPなど)ではなく、シンプルな社内ダッシュボード、ワークフローの自動化スクリプト、単一機能のマイクロツールなどが中心であると推測されています。

まとめ:自社のソフトウェアスタックを再評価する時

マッキンゼーの調査が示す「32%の企業がSaaS購入を見送った」という事実は、ソフトウェア調達のパラダイムシフトが確実に始まっていることを証明しています。

しかし、それはSaaSの終焉ではなく、「簡単に作れる機能からの脱却」を迫る進化のシグナルです。大企業がAIエージェントを活用して内製化を進める一方で、中小企業は自社のリソースと相談しながら慎重に見極める必要があります。

読者の皆さんが経営者やIT戦略担当者であれば、今こそ自社のソフトウェアスタックを見直す絶好のタイミングです。「これは本当に外部から買うべきコアなシステムか?」「それともAIエージェントを使って週末に自作できるレベルのツールか?」という新しい基準で、内製化すべき領域と購入すべき領域を再評価してみてはいかがでしょうか。

#AIエージェント#SaaS#IT戦略